今年2月に横浜動物園ズーラシアで発生したホッキョクグマ「ゴーゴ」の麻酔関連死亡事案について、発生から時間が経過した今なお、全国の市民や動物福祉の関係者、そして多くの動物ファンから非常に厳しい批判の声が寄せられ続けています。
公有財産であり、多くの市民に愛された尊い命がなぜ失われなければならなかったのか。今週の活動において、私はこの問題に関する詳細な開示資料の分析を進めてまいりました。その結果、現在の横浜市および指定管理者が示している対応には、地方自治体のガバナンスとして決して看過することのできない重大な違和感と組織的課題が浮き彫りになっています。主な論点は以下の2点です。

① 「身内の検証」に対する強い不信感――第三者専門家による再調査の実施を
現在、行政側から開示されている「麻酔事故に関する考察」や「死亡報告書」といった文書は、すべて事故の当事者である動物園関係者によって作成された、いわば「身内による検証記録」に留まっています。
しかし、その内部資料を詳細に精査すると、驚くべき事実が確認できます。麻酔開始直後から、生体の酸素状態を示す SpO2(経皮的酸素飽和度)が「80%以下」という、極めて危険な真の低酸素血症を示唆するアラートを出し続けていたのです。それにもかかわらず、現場の獣医師らはこれを「ホッキョクグマによくある機器の測定誤差」と思い込みで片付け、生存に必須ではない採精作業などの処置を漫然と継続していました。
事後考察の中で、自ら「低酸素を見過ごした可能性」「人工換気を早期導入すべきだった」と実質的な管理不備を認めざるを得ない内容を記述していながら、最終的な結論を「予期せぬ不可抗力による麻酔関連死」と結ぶその姿勢に対し、全国から「身内をかばい、責任を回避するための論理ではないか」と強い不信感の声が上がるのは当然の帰結です。
横浜市は、この事案を単なる一過性の不幸な事故として処理してはなりません。行政や現行の管理組織から完全に独立した、外部の野生動物医学・動物福祉の専門家を交えた「第三者委員会」を立ち上げ、客観的な再調査を直急に実施すべきです。
② 検証プロセスの違和感――議論すべきは「SNS対策」ではなく「命の管理」
さらに大きな違和感を禁じ得ないのは、この重大な事故の検証が、実質的に指定管理者の選定委員会のような内内の枠組みの中で取り扱われ、その委員会の中における議論の焦点が、いつの間にか「ネット上やSNS上の誹謗中傷への対策」へとすり替えられつつある点です。
いうまでもなく、今行政や関係委員会が最優先で取り組むべきは、ネット上の批判から組織の身を守るための保身の議論ではありません。国際的にも貴重な市民の財産(希少野生動物)がなぜ命を落とすことになったのかという「客観的な医療・管理プロセスの瑕疵の究明」であり、生体が発していた危険信号を現場が見落としたという重い事実に対する猛省であるはずです。議論の方向性が根本からズレている現状は、市民への説明責任を著しく軽視していると言わざるを得ません。

ゴーゴ事件が浮き彫りにした、横浜市の「忖度体質」を変革せよ
実は、私がこの再検証の必要性について当局と個別に面談・相談を行った際、担当部署の幹部は一旦は再調査の実施に理解を示し、了解の意を表していました。しかし、その後、事態は急転します。何らかの圧力が働いたかのように、役所側は「再調査は行わない」という極めて頑なな拒絶姿勢へと方針を翻したのです。
この不可解な豹変の背景には、現在の横浜市政が抱える極めて深刻な構造的病理が見え隠れします。トップの顔色を過剰に伺うあまり、役人の間に「不都合な真実は市長に報告したくない」「問題を表沙汰にして市長のマイナスイメージにしたくない」という事なかれ主義と、異常なまでの「忖度(そんたく)」の空気が蔓延しているのではないか。現在の横浜市において、他の主要事業や施策でも首長への過剰な忖度案件が次々と噴出している現状を鑑みれば、今回の急な方針転換も、まさにその歪んだ「役人根性」が働いた結果であると疑わざるを得ません。
今回のゴーゴの悲劇は、一頭のホッキョクグマの死亡事故という枠に留まりません。市民の財産を預かる行政としての責任を放棄し、保身のために蓋をしようとする「横浜市の組織体質そのものの歪み」を鮮烈に浮き彫りにした事件です。
このような悲劇を二度と繰り返さないために、現場における「徹底したリスク管理マニュアルの策定」や「安全基準の再構築」を行うことは当然の義務です。しかしそれ以上に、どんなに不都合な事実であっても透明性を持って開示し、過ちがあれば実直に正すという、地方自治体として当たり前のガバナンスと健全な空気を取り戻す必要があります。私はゴーゴ事件を単なる動物園の問題で終わらせることなく、本市に根深く巣食う「忖度体質」を根本から変革すべく、議会の場から徹底して追及の声を上げ続けてまいります。
横浜市会議員:山下正人