「大日向小学校・大日向中等教育学校」訪問

視察

明治の学制を超えて:AI時代の多様な学びと教育を核とした街づくり

1. 視察の背景と目的

生成AI等の技術革新により産業構造が劇的に変化する中、過去の知識を暗記・再現する「従来の官僚型・均一型人材」から、「自ら問いを立て、多様な人と協働して価値を創出する創造的人材」へのシフトが急務となっています。
また、横浜市においては1万人を超える不登校児童生徒の存在や子どものメンタルヘルスの課題が深刻化しており、明治5(1872)年の「学制」制定以来つづいてきた一斉教授型教育の限界と、多様な学びの選択肢(セーフティネット)の必要性が浮き彫りとなっています。
こうした課題に対する先進的な解を探るべく、オランダ発祥のイエナプラン教育を実践する日本初の私立特例校「大日向小学校・大日向中等教育学校」(長野県佐久市)を訪問し、本市への応用可能性を検証いたしました。

2. 視察から見えたイエナプランの本質

視察当日は夏休み期間中であったため、大日向中等教育学校の校長に直接ご案内いただき、実際の教室環境や教育器具を拝見しながら、日頃どのように授業やプロジェクトが行われているのか、その具体的な取り組みについて丁寧にご説明いただきました。

ファミリーグループ◆  異年齢学級(ファミリーグループ)の環境づくり 学年の枠を超えた協力関係を生み出すため、教室自体が「リビングルーム」のように対話や協働がしやすい空間構成となっている点をご提示いただきました。
ブロックアワー◆ 自立学習(ブロックアワー)の運用 子どもたちが週ごとの計画(ブロックプラン)に基づき自律的に課題へ取り組む仕組みや、教員が個別の進度を多面的に見取るフォロー体制についての解説を受けました。
サークル対話・ワールドオリエンテーション◆  対話と探究(サークル対話・ワールドオリエンテーション) 毎日の円形対話による自己承認の醸成や、教科横断的なテーマで本物の問いに挑む探究カリキュラムの具体的な設計思想をご説明いただきました。

3. 横浜市における導入の有効性と政策提言

① 不登校問題の根本的解決(「多様な学び」の選択肢)不登校は「子どもの問題」ではなく「既存の単一枠組みが合わなくなったサイン」です。自分のペースで学べ、他者と比較されないイエナプランの指導構造は、不登校児童生徒の心理的ハードルを大きく下げます。「学びの多様化学校(旧不登校特例校)」の制度やフリースクール支援の拡充において、イエナプランの理念・手法を導入することは極めて有効です。
② AI時代に対応する「人間ならではの創造性」の育成AIが定型業務を担う時代、人に求められるのは「対話力」「共感力」「ゼロから新しい価値を生み出す力」です。イエナプランが重視する「自立」と「協働」のサイクルは、明治以来の教育システムを令和・AI時代へとアップデートさせる強力なモデルとなります。
③ 「学校」を核とした街づくりと地域経済活性化佐久市(大日向)では、特徴ある教育機関が生まれたことで、子育て世代の「教育移住」が進み、人口動態の健全化や空き家活用、地元商店街の活性化という「地方創生・地域再生」の好循環が生まれています。 横浜市においても、郊外の廃校跡地(市有資産)などを利活用し、意欲ある民間事業者(私学やNPO等)を誘致・連携することで、「地域の賑わい拠点」と「先進的な教育の場」を同時に創出する街づくり政策が推進できます。

4. 今後の方向性

既存の公立教育を一朝一夕に変えるのではなく、「従来の標準的モデル」と「イエナプラン等の探究・個別最適型モデル」が地域の中で対等に並立し、家庭や子どもが自ら選択できる環境(マルチモデル)をつくることが、大都市・横浜の教育の厚みを増す鍵となります。
まずは、本市の保有資産(廃校等)のプロポーザル公募における「教育・地域貢献枠」の設定や、民間意欲団体との官民連携(サードプレイス事業や特例校設置)を軸に、実現に向けた検討を具体的に進めてまいります。

横浜市会議員 山下正人

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